来年の3月で60歳となり、ナレーターを始めて30年近くなります。よく若いねと言われますが、多分このような仕事をしているからではないかと思います。
ナレーターと言うのは、ナレーションの原稿があって、そこに書かれている文字を表現する仕事です。例えば、原稿用紙に「おはよう」と書いてあった場合、言う相手がどうなのか、状態はどうなのか、それによって違ってきます。状況によって表現方法が変わってくる、それがナレーターの仕事です。
今日は、違いを分かっていただこうと思い、実際の原稿を持ってきました。色んなドキュメントのナレーションや、清水エスパルスの試合ダイジェストのナレーションやCMなどもやっております。
〜実際のナレーションを披露〜
■外郎売り
拙者(せっしゃ)親方と申すは、お立合いの中(うち)にご存知のお方もござりましょうが、お江戸を発(た)ってニ十里上方(にじゅうりかみがた)、相州小田原一色町をお過ぎなされて青物町を登りへおいでなさるれば,欄干橋虎屋藤右衛門(らんかんばしとらやとうえもん)、只今は剃髪(ていはつ)致して円斎と名乗りまする。
元朝(がんちょう)より大晦日(おおつごもり)までお手に入れまするこの薬は、昔、ちんの国の唐人(とうじん) 外郎(ういろう)という人、わが朝(ちょう)へ来たり帝(みかど)へ参内の折からこの薬を深く籠(こ)め置き、用ゆる時は一粒(いちりゅう)ずつ冠の隙間より取り出(いだ)す。依ってその名を帝(みかど)よりとうちんこうとたまわる。即ち文字(もんじ)には「頂き・透(す)く・香(にお)い」と書いて「とうちん香」(とうちんこう)と申す。 …… |
なぜ”外郎売り”をやるのかと言うと、「滑舌が良くなる」「言葉と言葉の間が分かってくる」「スピードが分かってくる」という事があります。
人と会って話をする時に一番大切な事は、言葉がハッキリしている事、ゆっくりしゃべる事、自分の伝わりやすいトーンを覚える事ではないかと思います。普段リラックスしてしゃべっている声が一番通りやすい声だと思っていただければいいと思います。